<2005.8.28> 山間の唄
・・・曇り・・・

あ? 橋の袂の街灯で照らされ 浮かび上がる

筈の建物が見当たらない  そうかぁ終に撤去

されてしまったのか・・・。

一段落ち込み廊下状となる 流れとに挟まれた

車道を歩くと 子供達の笑い声が洩れて来る

建て付けの狂った侭の 木製ガラス戸には絵や

書等の作品が所狭しと掲げられ 其れを眺め

ながら通り抜けるのが好きだった 町方のものに

比べ 山村の其れらしく 慎ましやかな大きさで

校庭は建物裏に隠れ 古い木造校舎はライトに

照らし出された石塔だけが 此処に有った事を

伝えて来る。

上流部を覗いて

そんな校庭跡でお約束の宴は始まって行く 強か呑んだ末夜明までの僅かな時間 強い眠気に襲われ 其の侭

横に成ると 深く泥の様に眠りに落ちた 取り残された地べたの嘆きを感じながら・・・。

子供達の華やいだ会話が頭の中に反響し 夢の中から引き戻された ”此処は何処だ?” 意識は混濁朦朧と

したままだ ぼ〜っと辺りを見回すと 薄暗い空は厚く雲が圧し掛かる 点けたままの2個のカンテラ向こう側では

思い切り広げた 昨夜の宴会跡 更に向こうでは大の字で寝込む釣友 残りの二人は車の中か? あの声は

本当に子供達のものだったのか? 其れとも渓のざわめき 野鳥の声? 頭を揺すりながらコンロに火を点した

ブンブンやかましい出迎えの虻を伴い ベテラン

釣友と二人 入渓点向け歩き出す

平水の流れからは ポツ々ヤマメが姿を見せる

この里川は少々の雨が有っても 手が出せなく

増水する事は稀で 何時も安定した穏かさで

迎えて呉れる しかしその昔に比べ 魚の数と

型は確実に落ちた  まぁこの二人どちらとも

魚篭等なく ハナから魚の持ち帰りは念頭にも

無いらしい それどころか何処か渓水に浸り

呑める言い訳を捜してる

此処暫らく 人の往来は確認出来ない? 上を

目差すのなら 必ず其処を抜けねば成らぬ砂地

其の上にも古い足跡さえ残らないのだが 何とも

魚は薄く細かい 管理維持の意識が薄い渓では

何処も同じ様なものなのだが 淋しい事だ

ええい しかし五月蝿い虻だ! 

長めの深瀬が次の落ち込みへと消える境に立ち

目一杯上流向け振り込んでやると スッ流れに

乗った仕掛けは 一気に足元目掛け駆け寄り

岩魚も細かく成った

ヤマメは別嬪

左手沈み石裏僅かな緩衝帯へ引かれる 次の動作を阻むかの様伸びた枝を避け 小さな早い合わせを呉れる

”ゴン!”  ”グングンヒューッ” 押しの強い流芯を一気に横切り上流目差す走る々 ん!良いヤマメじゃぁないか

・・・とじ込み付録(実況)・・・

別働隊の迎えはそろ々来るのだろうか? 合流可能な地点まで先を急ぐとしよう 群れる虻を引き連れ 背丈上の

密藪を掻き分け高巻きに掛かる 無意識のうち出始めた鼻歌 此れは昔あの校舎から洩れてきた子供達の歌??

そぉ云えば あれはいったい何という楽曲だったのだろう。

                                                              oozeki